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コラム33(相続登記の義務化と所有者不明土地について)

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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25239550Z21C17A2MM8000/

土地相続 登記を義務化
法務省検討 所有者不明防ぐ 空き家問題にも対処

2017/12/29付 日本経済新聞 朝刊

政府は所有者不明の土地や空き家問題の抜本的な対策に乗り出す。現在は任意となっている相続登記の義務化や、土地所有権の放棄の可否などを協議し、具体策を検討する。法務省は早ければ2018年にも民法や不動産登記法の改正を法相の諮問機関である法制審議会(総合2面きょうのことば)に諮問する方針だ。・・・

以上、日本経済新聞電子版から引用

 

R5.5.18 追記

令和5年4月27日より、相続土地国庫帰属制度が施行されました。
令和6年4月1日より、相続登記の義務化がなされます。

いらない土地を放棄したい(相続土地国庫帰属制度)

このページは、29.10.8に執筆した、コラム30(所有者不明土地問題2・相続登記問題と意見)の続編です

執筆H30.1.2

1.対応するスピードの速さに驚き

上記の新聞記事を読んで非常に驚きました。

平成27年2月26日には、空家等対策の推進に関する特別措置法が施行され、

平成28年は、空き家問題がクローズアップされました。

そして矢継ぎ早に、

平成28年7月上旬には、法務省から相続手続きの簡素化が発表されました。

その相続手続きの簡素化の内容として、

平成29年5月には不動産登記規則が改正され、法定相続情報証明制度が施行されました。(発表から1年以内の施行)

また、先の空き家問題や相続登記問題とほぼ同時並行して、所有者不明土地問題があり、

平成29年に入ってからは、

所有者不明土地問題のニュースがよく聞かれるようになりました。

さらに、同時期には、地面師の問題も多く報道されました。

いずれの問題も、相続登記を行っていないことが原因で急にクローズアップされ、その対応が近年とても早いと感じるからです。

そこで、国(法務省)からの相続登記の義務化の発表です。

 

これには、少子高齢化による人口減少と不動産の所有をめぐる価値の大きな変化が原因の一端であることは間違いなさそうですが、相続登記をしていない問題は、実は昔からあったし、公共事業の障害であったことも同様でしたが、(単に復興目的だけではなく)どうして急に政府の対応が早くなったのだろうか気になるところです。

 

2.上記記事の気になる点

上記の記事には、気になる事が書いてありました。

私は、平成29年10月6,8日の本コラムでは、

所有者不明土地問題の解決には相続登記の義務化が必要だと意見していましたが、

そこには大きな壁があるとも書きました。

 

それは、相続登記は権利の登記であり、

私的自治の尊重が原則となるので、

憲法の解釈や民法の変更が必要と考えていたので、義務化は難しいと書きました。

 

しかし、上記の記事によれば、

平成30年にも、民法や不動産登記法の改正を視野に入れて、法制審議会に諮問する方針、とのこと。

法制審議会の諮問には通常、数年を要するので、すぐに法改正ができるわけではありません。

しかし、基本法を改正してまで、相続登記問題(所有者不明土地問題)を解決しようとしている国(法務省)の姿勢には、単純に所有者不明土地の名義を特定したいだけではなく、何か国家のグランドデザインを変えたい筋からの意向があるのではないかと感じざるを得ません。

 

3.上記記事の驚きの内容

これは、以下の本コラムで発信していた相続登記問題への意見を何らかの形で実現しようとする内容であり、そこに驚きを感じざるを得ません。

なお、本コラムを執筆した平成29年10月6及び8日の時点では、

コラム30(所有者不明土地問題2・相続登記問題と意見ほどの踏み込んだ提案内容は、新聞やニュース発表はほとんどされていなかったと思います。

 

平成29年12月29日の日経朝刊の記事によれば、

法務省によれば、相続登記の義務化、その違反の罰則の設定について、土地所有権放棄の可否(基準の検討)など、明治以来の古い制度を本格的に変更しようという内容でした。

 

本コラム:コラム30(所有者不明土地問題2・相続登記問題と意見)の第2の1と2で述べている意見部分の要約によれば、

1.相続登記の問題の解決には、義務化の検討も必要

➡ 法改正と相続登記の義務化に触れています

2.所有者不明土地問題や相続登記促進への1つの意見

① 既に長期間、所有者が不明の土地(不動産)について

➡ 本コラムでは、災害復興地域などへの国庫帰属特区など何らかの形で行政や国が関与すべきことを意見しました。

上記の記事ではありませんが、国土交通省が行政等利用の場合の利用権設定を検討してます。

② 所有者不明土地(不動産)の問題は、引取り手がいないことが一番の問題

➡ 所有権放棄と現在の制度の簡略化(不在者・相続財産管理人制度)と国庫帰属に触れています

③ そして、これから相続登記をする方へは、

➡ 罰則の案に触れています

 

4.相続登記の登録免許税の優遇措置について

その他にも、以下のような相続登記に関する税制上の優遇措置が発表されています。

出典:平成30 年度税制改正の大綱(平成29 年12 月22 日閣議決定)より抜粋

4 土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設
(1)相続により土地の所有権を取得した者が当該土地の所有権の移転登記を受けないで死亡し、その者の相続人等が平成30 年4月1日から平成33 年3月31日までの間に、その死亡した者を登記名義人とするために受ける当該移転登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。

➡ 死者名義にする時の相続登記(数次相続のうち、一次相続の部分の登録免許税免税)


(2)個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(仮称)の施行の日から平成33 年3月31 日までの間に、市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続登記の促進を図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地について相続による所有権の移転登記を受ける場合において、当該移転登記の時における当該土地の価額が10 万円以下であるときは、当該移転登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。

市街化区域外の土地を行政が利用する場合に、法務大臣が指定する土地の価格が10万円以下の場合の相続登記の登録免許税は免税

 

コメント:(1)は、意味が分かりにくいと思いますが、相続登記を長年放置して数次相続となった人の一次相続の分だけの登録免許税を免税するという。これは、利用できる人も多いと思います。

コメント:(2)は、田舎の価格が10万円以下の土地で、行政による利用又は買収予定地の相続登記を対象にしているので、利用できる人は限られてきます。

 

➡ R5.5.18追記

4(1),(2)は、現在は、令和7年3月31日まで、

(2)は、個人の相続土地の価格が100万円以下の場合、
所有権保存・移転登記の登録免許税は免税となっています。
また、行政利用などの制限がなくなりましたし、

10万➡100万円に増額されました。

また、令和6年4月1日より相続登記の義務化となります。

 

 

5.さいごに

相続登記の義務化や所有者不明土地への行政による利用権設定、空き家問題等の解消には、憲法で定める私有財産制の保障や民法で定める登記の対抗要件など、様々な点にメスを入れ、問題をクリアしなけねばなりません。

しかしながら、現在の法律ができた時代とは異なり、現代の時代背景や価値観の変化を考えると、ドラスティックな改革が求められることもまた事実であります。

 

少子高齢化による人口減少という流れ、不景気が長く続いたという環境で生まれた現代の若者を中心に、所有よりシェア(共有)という時代の流れがあります。

そして、不動産も余る世の中にあっては、むしろ、今までの法改正や相続登記しない不動産への対応が遅かった位だと思います。

いろいろと書きましたが、災害にあった人の復興を願うとともに、行政手続きの簡素化や相続登記の義務化、空き家問題、所有者不明土地等の社会問題については、今後も気を付けて見届けたいと思います。

 

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