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コラム29(所有者不明の土地問題1-相続登記は進むのか?)

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21791110S7A001C1PP8000/

所有者不明の土地調査 法務省 相続人に登記促す

2017年10月3日 日本経済新聞

   法務省は2018年度から、相続の手続きがされずに所有者がわからなくなった土地の本格的な調査に乗り出す。全国の司法書士らに委託し、登記簿などから所有者が生きているかを調べる。すでに死亡している場合は法定相続人をたどり相続の登記をするよう促す。

 法定相続人の一覧もつくる。地方自治体などの公共事業の担当者や所有者の親族、民間の再開発事業者などが法定相続人を調べやすくする。

引用以上(2017.10.6)  以下、メディア紹介後に意見へ続く

 

R5.5.18 追記

平成29年から6年。国も動き出しました。

令和5年4月27日より、相続土地国庫帰属制度が施行されました。
➡ 下の方にリンクを設定しました

令和6年4月1日より、相続登記の義務化がなされます。

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いらない土地を放棄したい(相続土地国庫帰属制度)

 

※ ところで、所有者不明土地の問題とは

九州の面積よりも広い土地が、相続登記をしていなかったり、相続放棄されたことで、所有者が不明となっているという問題です。

これは、平成29年6月下旬に、所有者不明土地問題研究会(増田寛也座長=元総務相)が発表したもので、土地神話の崩壊を象徴して、いかに利用しにくい、または利用価値がない不動産が増えているかがわかる問題です。

その所有者不明土地(負動産)問題は、利用しない・できない土地という問題だけではなく、空き家問題や公共事業や災害からの復興ができないという社会資本の有効利用の妨げも意味しています。

 

※ 所有者不明の土地(不動産)はどうやってできるのか?

戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場に、住民票は住所地の市区町村役場にあります。

そして、住民票と戸籍謄本のある市区町村役場は違うことがあります。

長年、相続登記をしていないと、登記簿謄本の住所(住民票の保存期間は除籍後5年)と氏名から、戸籍謄本のある本籍地を探すことが困難になります。

そして、仮に本籍地がわかったとしても、戸籍謄本の保存期間(現在は150年ですが、平成22年改正までは80年だった)が過ぎてしまい、登記名義人の死亡の事実を証明することが困難になることで、所有者が不明となってしまいます。

※ 最近ですと、明治40年より前の戸籍謄本は見つからないことが多いです。

また、一人っ子で生涯独身だったりして、相続人自体がいない可能性もあります。

このようなことで、所有者不明の土地(不動産)ができあがります。

 

 

冒頭のニュースに戻って、

法務省が、

今年5月に発表した、相続手続きの簡素化としての「法定相続情報証明制度」に続き、上記の日本経済新聞社などの記事によれば、法定相続人の調査を司法書士らに委託して、所有者不明土地の「法定相続人一覧(表?)」を作成して、土地の利害関係人の調査がしやすくなるように24億円の国家予算請求をするとのこと。

そして、不動産登記法などの改正も視野に入れて、相続登記が必要な場合は、法定相続人に相続登記するよう促すようです。

 

ところで、昔から、司法書士は相続登記がなされていない不動産や所有者不明土地の問題の存在を知っておりました。

実際に平成21年2月からは毎年、全国の司法書士会を通じて「相続登記はお済みですか月間」として2月の1か月間を相続登記を促すキャンペーンを行ってきました。

(引用:日本司法書士会連合会のホームページ)

 

なぜなら、司法書士は他資格と比べると目立たない資格ですが、親族・相続法の手続きに精通する専門家として、資産がほとんどない方から資産家までの遺産分割や相続登記などを通じて相続手続きが面倒なことを一番身近に経験しているからです。

だから、数世代にわたって相続登記されていない不動産の相続人の確定作業の困難さを知っています。

 

もちろん相続トラブルが大きくなったら、弁護士が表に出てきますし、事件になったら目立ちます。

どのくらいの確率で相続トラブルになるのかの統計はとっていませんが、相続のうち、十中八九はトラブルがない、または弁護士が関与しないように感じます。

考えられるのは、相続トラブルが多ければ家庭裁判所はパンクしてしまうし、多少のトラブルならば、高い弁護士費用と今後の人間関係の代償を払うよりは妥協するからです。

 

また、相続税の申告では税理士が出てきます。

しかし、相続税を支払うべき相続は、全体の8%くらいと言われています。(ちなみに平成27年の相続税増税前は、約4%でした)

(引用先:平成28年12月国税庁の「平成27年の相続税申告状況について」より)

ということは、税理士も相続においては関与率は低いと考えてもよさそうです。

 

この他には、ご自分で相続登記等を行う方もいます。

法務局や司法書士会、市役所などの無料法律相談に通って、ご自分で手続きを行う方もいますが、無料相談と言う形で司法書士は関与していることが多いと思います。

 

このように、昔から多くの司法書士達は、広く相続手続きに関与し、数次相続になったら戸籍を集めることや遺産分割が大変になるよ、と言って個別に相続登記を勧めていました。

そして、司法書士団体は、登録免許税の手数料化など登記費用の軽減を訴えてきました。

しかし、国は、税収の減少を恐れてか、登録免許税の減額や司法書士の利用を特にすすめるなどといったこともなく、現在のように所有者不明土地問題へと発展しました。

 

国も行政も平時は関心がなかったので、司法書士達の声を聴かず、何も対策をしてこなかったのです。

それを今さら、大災害の復興を行うにあたり、所有者不明の土地の手続きが進まないことで、はじめて相続登記の大切さが分かったといって、法務省が相続登記をしましょうとキャンペーンを張って啓蒙したり、少額の登録免許税の減免措置を行うくらいでは、おそらく、相続登記が進むとは思えません。

 

どうして、そう言えるのか?、って反論されそうです。

私達の経験上、相続登記は普通のキャンペーン位では、どうにもならないと思います。

なぜならば普通の人は、いらない不動産(負動産という)に、登録免許税や雑費、司法書士報酬、そして今後の維持・管理費用などをかけたくないと思うからです。

弊職以外の司法書士も、地方の相続登記をすすめていますが、固定資産税が請求されない不動産は当然ですが、少額の固定資産税位でしたら税金も登記も無視する人がいることが経験上わかっています。

そもそも普通の人は、金を払って厄介なものをしょい込むはずはありません。

弊事務所のホームページでも、格安又は無料で相続放棄したい人のアクセスが多いです。

 

では、相続登記を簡単にすればいいのではないか?、って反論されそうです。

そうすれば、資産として成り立つ不動産の相続登記は進みますが、そんなものは、相続登記を簡単にしなくても進みます。

なぜならば、資産であれば相続登記をして、いつでも売ったり、担保に利用できる状態にしておきたいし、少し費用をかけても取り戻せるからです。

ですから、相続登記を簡素化する事では解決しません。

むしろ、簡素化することで、本来簡単にしなくても相続登記を行う権利意識が強い人や勘違いした人が法務局に押し掛けたり、司法書士に頼む必要がないと考えていい加減な登記申請をすることで、その厄介な人の対応のために、法務局の事務が停滞する対策などに無駄な税金が投入されるだけです。

 

また、ニュースにある通り、法定相続人一覧(表?)を作成しても、行政や債権者などの利害関係人の調査費用が減るかもしれませんが、それをもって、真の所有者(相続人)が自主的に相続登記をしてくれるか、という問題との因果関係はわかりません。

負動産には、簡素化の魔法は、「馬の耳に念仏」と変わらないと思います。

 

R5.5.18 追記

令和5年4月27日より、相続土地国庫帰属制度が施行されました。
➡ 下の方にリンクを設定しました

令和6年4月1日より、相続登記の義務化がなされます。

 

このコラムを読んで私自身や司法書士との業務などに興味があった方は、

お問合せフォームからご連絡いただければ幸いです。

 

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